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家族の風景

リビングのオープンキャビネットに仕切りを作りたくて、ホームセンターへ出かけた。
実家の父の車で、母にも付き合ってもらって。

夫と離れて、娘と猫二匹を連れて引っ越したマンションは、約10年前から再開発が進む地域にあり、
子育て世代が多く暮らしている。近隣には商業施設も揃い、とても便利なエリアである。

木材コーナーで、コの字型の仕切りを作るのに理想的なベニヤ板を見つけた。
そもそもDIY経験は皆無なので、どんな板が最適かは知らないが、
私が必要とする「厚みと大きさ」の板は1種類しか無かったので、かえって悩まずに済んだ。
昨日採寸したメモを手に、無口な女性店員さんに木材をカットしてもらうべくオーダーする。

「このベニヤ板から、この大きさを3枚ずつ、5セット欲しいんです」と伝えると、
「この板から5セット取れるかどうか、計算はしてみました?」と、当然ながら聞かれる。
「すみません、計算はしていないんですが、ネットで見た情報では、同じ大きさで6セット取れた人がいたと…」
我ながら、何て間抜けな回答だろう、と思って苦笑してしまったが、正直に言うしかない。
店員さんも微かに失笑しながら「刃が当たれば削れたぶんの誤差が出ますし、完全に計算通りというわけにも行かないですから、とりあえず切っていきますね」と言い、引き受けてくれた。

木材をカットする機械は、大きな音がするので、娘が怖がり、クスンクスンと泣き出してしまった。
母が慌てて「あらあら、お花を見せてくるわ」と、店舗出入口にあった鉢植えコーナーにベビーカートを引いて行った。

カットが終わったあと、店員さんにヤスリ選びを手伝ってもらい、会計を済ませて父を呼ぶ。
娘は広い店内を母とくまなく散歩し、花に触ってご機嫌だという。

父と一緒に、店舗一角にある工作室へ向かい、利用受付をして大きなテーブルに木材を広げる。
「ヤスリは二種類、粗く整えるのがこれ、仕上げのがこれ」
簡単に説明をして、ヤスリをカットして父に渡す。

そこから黙々と、ただただヤスリをかけ続ける。
黙々と手を動かし、できるだけ綺麗に、できるだけ滑らかに。

ふと、父はいま何を思っているのだろう、と考えた。
なんの質問を挟むこともなく、ただ黙々と、木材とヤスリに向き合う父。
急に連れてこられたホームセンターで、言われるままに。

同棲から四年でようやく入籍した娘が、入籍からわずか三年で孫を連れて別居し、
その住まいを整える作業に協力している。
家族三人の新居への引越し手伝いから、まだ一年も経っていないのに。

何も聞かず、誰も責めず、ただそばで助けてくれる。
父はただ一定のリズムで、静かにヤスリを動かしていた。

仕上げのヤスリをかけながら、
究極的には、家族とはこういうものなのだろう、と思った。

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