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「何かがおかしい」夫婦のはじまり

夫が喧嘩のたびに「別れる」ということは、私にとって非常に苦痛だった。
同棲時代からそうで、そんな相手となぜ結婚までしたのか、という話だが、早い話が「適応」したのだ。
ともにフルタイムで働いていた同棲時代から、私は彼の仕事を手伝ってきたし、彼が多忙だという理由で、家事をすべて担ってきた。
その時点で、自身の生活基盤を彼のために大きく変えているのだから、社会的にもそう簡単に別れるわけにはいかなかったし、
そもそも、「私自身の性格に問題があるのなら、直すことは彼のためだけではなく、自分のためにも必要だ」と思えた。夫は「私にこんなことを言わせるあなたが悪い」という人間だったから、私が悪いのだろうと考えた。

同棲後、最初の喧嘩はこんな感じだった。
ある日、私が「どうしてもしてほしくない」と伝えていたことを、彼が、私の意見を完全に無視する形で行った。
私はそれを知ってすぐ「なぜこうしたのか」と、強く彼に怒った。私はしないでほしいと伝えたはずだと。
その一言で、彼はブチギレた。「自分には理由がある!試してみないと分からないのに、はじめから否定するなんて、自分の意見を聞いていないのはあなただろう!」とブチギレた。
予想もしていない「逆ギレ」に驚愕したが、私も気の強い人間なので、激しい口論になった。

一体、彼が何をしたのかというと。
同棲している自宅内の廊下に数台の見守りカメラを付けたのだ。
私はもともと「リビングだけならいいが、共有スペース等にまでつけてほしくない」と明確に伝えていた。
しかし、私が入浴後、脱衣所から出てくると、すでにカメラが取り付けられていて、私の挙動にあわせてレンズを動かしていたのだ。
私は「入浴後+カメラに追尾される」という状況で、かなり神経にきていた。
だから怒った。

夫はその私の怒りを、さらに上回る形で、顔を真っ赤にして怒った。
彼は論理的で非常に弁が立つ。
言葉によどみがなく、一方的な主張で私を追い詰めた。
私が泣きながら「それはおかしい」と訴えると、足を踏み鳴らして「自分を責めるな!」と怒鳴り、
私はそんな人を見たことがなかったので、恐ろしくなった。
その後、「しばらく会話したくない」と一方的に会話を断ち切られた。

そして数週間がたった。私はその間も、彼に朝食も夕食も用意し続けた。
急な「別れる」発言と対話断絶に大きなショックを受けながらも、
「確かに、初めから怒って言ったのは悪かったよね」と、自分にも非があると感じていた。
数週間後、ようやく彼が話し合いの時間を持ってくれた。

開口一番、彼は「あなたが攻撃的な言い方をしたから悪いよね」と言った。
こうした「仲直りの場」では、とかく「相手も言いすぎたと謝るもの」だと思っていた私は、正直いって、肩透かしをくらった。
しかし、そう言われると、確かに自分が悪い、初めの怒りの空気で彼を激昂させてしまったんだ、という気がしてきた。
私は改めて、謝った。
「そういうのは良くない」と、上から諭す形で、彼は私に言った。
確かにその通りかもしれない、と思った。

数週間のあいだ、辛く苦しい状況のなかで生活してきた私は、
とりあえず仲直りができたことに安堵したが、
しかし、どこかで「でも何かがおかしい」と感じた。
私がこれまで経験してきた、見聞きしてきた、普通の人間関係とは違うものがある気がした。
しかし、自分の言い方にも、それなりに非があるとは感じていた私は、
そうしてパートナーに怒られた自分に恥を感じると同時に、何かが薄く削られたのを感じた。

今思えば、そこから始まっていた。
彼との関係性から離れて、過去を俯瞰して見られる状況になったいま、
夫の反応や発言に対して冷静に「それはおかしい」と思えるが、
当時の私はこの問題を、夫のものではなく私のものだと思い込んでいた。
そして夫は当然のように、すべての問題を私のものだと、今も思い込んでいる。

だから私は、子どもを連れて、夫から離れることに決めたのだ。


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