今回の喧嘩もまた、些細なことがきっかけだった。

娘が朝寝に入る時間までに、家を出てほしいと伝えていた。
夫はいわばフレックスタイム制で働く人間で、時には昼近くまで自宅作業をすることがあった。
しかし、そうすると赤ん坊を寝かしつけている時に夫がドタバタすることも多く、赤ん坊が目を醒まして寝付けなくなってしまうことが度々あった。そのため、「10時までに家を出てほしい」と伝えていたのだ。
しかしその日、夫は10時を過ぎても家を出ず、自宅でメール返信などの作業を始めてしまった。
そして10時半、娘が眠り始める時間帯に、隣室で大きな音を立ててダンボール箱を開封し始めた。
フリーランスで在宅ワーカーの私はその日も、娘が寝ている間にすべき仕事があったので、
「いつ夫が出てくれるのか」とやきもきしていた。
せっかく眠ったところでまた起きてしまったら、娘が気の毒なことはもちろん、私の仕事時間もなくなってしまう。
しかし夫は、強い口調で伝えると激昂する性格なので、私は決して夫に対して怒ることができない。
私としては、何度も伝えている約束を度々破られてきているのだから、怒りたい気持ちも山々なのだが、
私が怒り調子で「今、それやめてよ!」などと言えば、逆ギレして私を責めるに決まっている。
とはいえ、延々と育児・家事・仕事に追われる私も、ピリピリとしていた。
ドアをノックして開け、声を抑えて言った。
「ちょっと、静かにしてほしい」
この一言で夫は激昂し、
「自分には時間がないんだ!今しかできないんだ!」
と、顔を歪めて強い口調で怒り始めた。
ああまたか。
この状況でもキレるのか、と私はがっくりきた。
始まってしまった。
「今寝たばかりなんだってば」「もう10時も過ぎている」と何度か言い返したが、
「あなたには想像力がない!そこまで大きな音でもない!実際に起きてないだろう!」
と、夫は大声でまくしたて始めた。
これでは本末転倒だ。本当に娘が起きてしまう。娘が起きれば対応するのは必ず私である。
私は諦めて「もういいよ、そんな大声出すと起きちゃう」と伝えて夫の部屋を去るそぶりを見せた。
夫は「あっそう、あなたは、パートナーにそんな対応をするのね!」と、私の肩越しに捨て台詞を投げてきた。
まるで私が、例えば皇族に対して無礼を働いたかのような反応である。
夫はいつでも「いかにも倫理的・道義的っぽい」観点から、私が「外れたように見えるところ」を攻めてくるのだ。
まるで、それだけを集中攻撃すれば、相手をコテンパンに負かせるとでも思っているかのよう。
今回は「口論途中に去ろうとしたあなたは、無礼で悪であり罪である」。
この点に決めたらしい。
夫との口論は、いつも完全に論点がすり替わる。
そもそも夫は「時間がない」「忙しい」と言い、
家事も育児もまったくやらないが(娘は「可愛がる」だけ)、
毎日3〜4時間をテレビ、スマホゲームに費やしているのである。
もしもそれがなく、夫が本当に過密スケジュールあれば、私も
「時間がないから、今、音を立てても仕方がないよね」と思うのだが、
毎日3〜4時間の余裕があり、のんびり8時に起きて10時から仕事を始めて、
「今しかできない」「時間がない」と言われても…である。
その後、家を出た夫から、また例の一言が届いた。
「私は限界だ、しばらくあなたと会話をしたくない。必要最低限にとどめてほしい」
ああ、また始まった。
娘がいるにも関わらず。
今までの「対話断絶」より、ショックが数段大きかった。
これは1歳児を養育する母親に対する振る舞いとして、あっていいのか。
私は岩で頭を殴られたような衝撃を受けていた。
一歳児は世話をされなければ生きられない存在なのに、その母親である妻を生活から除外することは、
育児放棄をするのと同じことではないのか?
この人は子どもの存在を何だと考えているのか?
そもそも、
あの私の一言で、ここまでキレる人間って、一体何なのか。
この人、ちょっと、おかしいのでは?
初めて、この感覚が身をよぎった。
いま振り返れば言語化できるが、これは娘に対する「間接的な虐待」だったのだ。
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